2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

専攻対談

漆工 PD 保存修復 DIALOGUE 002

  • 漆工茂木 芽衣
  • PD副島 萌花
  • 保存修復太田 奈央

漆工専攻への質問

制作の過程で作業が滞ってしまった時はどうしていますか?(太田)

茂木 作業が滞るのは一番は時間がないとき、二番目に自分の技術力の問題だと思うんですけど、それをどう解決するかと言われると…う〜ん…

スランプなどはありますか?

茂木 私はずっと絶不調かもしれない(笑)絶好調の時は二日間くらいしか続かない… でも、進みが悪いなっていう時はあまりないかもしれない。加飾の時とかは無心なので、造形とか、作業の時間配分で悩むことが多いかも!

他の方々も、共感される部分はありますか?

太田 私も作業しているときは無心なので、淡々と手は動くんですよ。ただ、それに至るまでの過程でめっちゃ悩みます。本当にこの色でいいのか、この詰め方でいいのか。私の場合は一から作品を生み出すというよりは元の画像ありきの話なので、描かれた過程がものすごく重要なってきます。なので、手を動かしてない方が結構苦しいですね。他の人はきっともっと楽しいと思うんですけど(笑)

副島 私の場合も計画段階が一番大変ですね。コンセプト詰める時もそうですが、作品を作るにあたってプロトタイプをたくさん作るので、手を動かしていても進捗がない時は苦しいですね。

なるほど、手を動かし始めたら楽しいという方が多いですね。

制作に長い期間がかかりますが、どのようにスケジュールを組み立てるのですか?(副島)

茂木 私スケジュール立てたことがなくて。最初に方向性をある程度決めて、作業を進めていくうちに現れる選択肢をその都度選び取っていくだけで、先々の計画はあんまりないですね。

間に合わない!ってなることはないんですか?

茂木 めっちゃある…(泣)

副島さんはどうですか?

副島 私は逆算して予定立てますね。でも、結局それ通りにはならないから、茂木さんと同じでその場その場で決断している感じです。

茂木 お互い大変だね。

太田 私はスケジュール立てるのがものすごく苦手です… 「こうできれば理想だね」で終わっちゃう(笑)ここ端折ったらいける!っていうところを削って時間短縮します。

副島 わかります!でも大抵そういうとこ端折ったらうまくいかないんですよね(笑)


保存修復専攻への質問

原作者の表現の癖に対して自分とのギャップを強く感じたとき、どのように調整をしているのか知りたいです。(茂木)

太田 私の場合は保存修復専攻として模写しているときは極力自分を入れないようにしていて。どっちかというと、「こういう表現あるんだ!」って発見があったら、自分の表現に取り入れようと必死で真似るって感じです。基本受け身ですが、「なんか盗めんかなー」とは思いながらいつもやってます。自分の作品を全く描かないわけではないので、そこに活かせる表情とかはないかとか。その視点で探っていくと、保存修復としても得られる発見が結構あって。

じゃあ古画に対して、「自分だったらこうするな」とか「ここはこうした方がよかった」と思うこともないですか?

太田 全く思わないことはないですね(笑)「なんでここをこんな厚く塗ったんだろうな〜」とか逆に「なんでこここんなに存在感ないんや!」って思うこともあるんですけど、それは主観で見たときの感想で、「いやいや待てよ」と客観的に見たときに作者の意図を一歩引いてみることができるきっかけになっています。

副島 技法だけでなく、意図や背景まで汲み取って制作されるということですか?

太田 そうですね、私も最初は技法だけを重視してやるのかなと思ってたのですが、だんだんやっていくと、作品が作られた背景がその作品を作った人の立場とかを知った上で制作すると「だからこうしたんか」と理解できるんです。極端にいえば、貼られている金箔がちょっと変な色だったら「お金なかったんかな」とか思ったり(笑)逆に線描がすごい綺麗だったら「この時代だからすごい綺麗なものが良しとされてたんだな」とか、自ずと背景を知っていくことにはなると思いますね。

コロナで博物館や美術館が利用しにくくなって1年経ちましたが、昨年と比べて変わったことはありますか?(副島)

太田 そもそも私が昨年まで富山にいたので、富山だとまずこんなに美術館ないんですよ。だから外部から来た者にとっては、コロナだろうと「観れるもの多いな」って感じで(笑)逆にみなさんに聞きたいです。

副島 美術館もそうなんですが、私はやっぱり大学の設備が利用できなくなって、家でできる制作しかできなくなったのが大きかったですね。漆工はどうですか?

茂木 私の場合は大学行って作ることがガクッと減ってしまって、それに慣れすぎて、家から出られなくなりました。

太田 それもありますよね!私は周りの人の進捗とかを見てモチベーションを保つタイプなので、それが全く無くなったのはきつかったですね。


プロダクト・デザイン専攻への質問

アイデア出しの際、毎度共通するルーティーン等はありますか?(茂木)

副島 ルーティーンかぁ…一番最初は文章に書き出すことが多いです。クロッキー帳に1ヶ月、2ヶ月くらい文章を書き連ねることでやっと絵が出始めます。

なるほど…そもそもなんですが、PDの制作ってどんな感じなんですか?

副島 すごく自由です。先生方からも最終的にできるものがプロダクトじゃなくていいっていうのはずっと言われてます。半期に三つ四つ課題が同時進行で進んでいくことが多いです。

茂木 漆工は3回生以上からは課題は全くなくて、半期に一つ作品を作るって感じですね。

太田 私の場合は2年かけての模写をしていくのですが、皆さん各々の方向で大変ですね(笑)

PDは論文もありますよね。どんな感じなんですか?

副島 論文は半期に1本書いて、テーマも自由に設定します。制作物から着想を得て書く人もいますし、全く違うことをテーマにする人もいます。

太田 量とかも自由なんですか?

副島 全く自由です、採点基準とかも量は関係ないって言われました。一つの論題に対して筋道立てて結論が出せていればOKという感じです。総芸の論文とかとは少し違うかもしれないですね。

保存修復の方も論文あると思うんですが、作品と文章を同時並行で進められるというのは本当に尊敬します…私は論文で手一杯です…

PDで使う素材はどこで見つけたり、調達されたりしていますか?(山田)

副島 う〜ん、amazon?(笑)ネット通販やホームセンターを利用することもありますが、木や金属など、学生ではできない加工は教授の伝手を通じて発注することが多いです。ただ、やっぱり手に触って実際に扱うものを作る専攻なので、一回は絶対に自分の目で見て触ってから購入するようにしています。

ちなみに、制作費は自費ですか…?

副島 自費ですね。私はまだものが小さかったり、使ってる素材が紙が多かったりで比較的安く済むんですけど、素材や造形にこだわる方はもっとかかると思います。正直厳しいですね…それこそ漆も高いイメージがあるけど。

茂木 漆がまず高いからねぇ。大きいものを作ろうとすればするほど制作費は嵩みますね。

太田 本当に上限ないですよね…保存修復だと、結局使う和紙も伝統工芸品なので、単価は高いです。もちろん画材も…

最後ちょっとリアルな話で着地してしまいましたが、今回お話聞いて、それぞれの専攻の相違点、共通点を知ることができました。普段はなかなか専攻の枠を超えてお話しすることがないので、すごく面白かったです!本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました。作品展を楽しみにしています!


  • インタビュアー山田 歩実
  • カメラマン駒井 志帆
  • イラスト石塚 紗詠

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