2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

専攻対談

彫刻 油画 環境デザイン 構想設計 DIALOGUE 003

  • 彫刻石原 温三
  • 油画中西 優多朗
  • 環境デザイン西尾 綾香
  • 構想設計棟 光里

環境デザイン専攻への質問

【環境デザイン】という字面からかっこいいイメージがあるのですが、環境デザインのかっこよさについて教えてください。(中西)

中西 質問についてちょっと補足するんですけど…【環境】【デザイン】ってどっちもかっこよくないですか、字面が。

石原 全部勝った感あるよね。2部門制覇してる。

中西 そう。だから語って欲しいなぁと思います。

西尾 そうですね…(笑)私個人として思うのは、物事をいろんなスケールで捉えてるっていうかっこよさがあるなと思います。例えば縮尺が1/200の敷地模型を作ったりするんですけれど、それを俯瞰して見ていると、天空からの視点のような…神、みたいな気持ちになったり。3Dモデルを作って実際に人の目線で中に入って確かめたり。いろんな視点で見れるっていうのが結構かっこよさですね。

中西 スケール感が大きいですよね。ズームアップもできるし。

西尾 実物は持ってこれないので…(笑)いろんなスケールを行き来していますね。

環境デザインと聞くとビジネス寄りの公共デザイン的なイメージがありますが、作品を作る時はどのように発想していますか?(棟)

西尾 作品を作る時に0から何かを生み出すことはほとんどなくて、すでにある土地にこういうものを建てます、というようなアプローチなので、まずはその敷地周辺をリサーチしてどういう場所なのかを自分で解釈してから計画を立て始めます。確かにビジネス寄りなイメージはあるかもしれないけれど、私は自分自身の空間への個人的な感情や思い入れも参考にしてそれを土地に結びつけて作っていますね。

研究者兼作家、みたいな感じなんですね。かっこいい〜


彫刻専攻への質問

木材や金属などの素材はどのように調達していますか?(西尾)

石原 例えば学内で見つけた、先輩が使っていたけれど少ししか彫られていない木を、原型がなくなるくらいまで彫るという場合ならそれを使ったりはします。もともとある素材が汚かったり思っているものと違ったりしたら取り寄せたりと人それぞれですね。現地に買いに行く人もいるので、お互いにどこからその素材を持ってきたのかというのは知らなかったりします。僕の土だったら、「泉陶料」という京都で土を扱っているところに電話して大学にトラックで持ってきてもらうという形で調達しています。

西尾 ホームセンターとかじゃないんだ。

石原 そうですね。安さとかコスパも考えるとそうなりますね。

大学から使う粘土を支給されるのかと思っていましたが、個人個人でこだわりがあるんですね。

石原 塑像で使ってもう一回土に戻すようなものであれば、彫刻専攻に置いてある粘土を使ってもいいんですけれど、例えば僕みたいに作った粘土を焼くとなるとそこからもう戻せないので、材料は消耗品として自分で買っていますね。

【彫刻】と言う字面からかっこいいイメージがあるのですが、彫刻のかっこよさについて教えてください。(中西)

石原 そうですね…僕はすごく素材や過程を大事にしているんですが、素材に対してのストイックな姿勢を回生を重ねるごとに専攻内でも見ることが多くて。僕が2回生の時に4回生の先輩の話を聞くことがあったんですが、こんなに自分のやっていることに責任を持っているんだ、とか、こんなに真摯に素材に向き合っているんだ、と知ってそれがすごくかっこいいなと感じたので、僕もそうありたいと思っています。なので、素材と向き合っている人たちがかっこいいなと思いますね。


油画専攻への質問

油絵で、最初に描いていた絵がしっくり来なくて上からまた重ねて描き直すようなことはありますか?それとも最初から計画的に描き進めていくのでしょうか。(西尾)

中西 もちろん計画的に進めるんですが、めちゃくちゃ塗り重ねたり消したりしますね。

西尾 始めに考えていたものと全く違うものが出来上がったりは…?

中西 全く違う、という風にはならないです。基本的に油画は層にしていく描き方なので、消しているというよりはそれによって厚みを出しているようなイメージです。

油絵具は、重ねることで色が違って見えるような効果があるんですか?

中西 厚めにのせるとべたっと消せるんですけど、僕はあんまり分厚くのせないので下が透けたりしますね。水彩絵具のように半透明に描くこともできるし、分厚くのせて存在感も出せたり、結構自由な画材です。

油画にはキャンバスと空間・キャンバスと物体のように平面以外の表現をする人もいると思います。そんな中で、中西さんがキャンバス上で表現することへのこだわりや葛藤などはありますか。(棟)

中西 個人的に、全部言いたくないというのがあって。キャンバスの上で完結はさせるんですけれども、例えば人物の目線の先に何があるのかとか、横の空間はどうなっているのか、みたいなものをできるだけ場として感じられるようにして、それ以上は言わないようにしています。もちろん派生させたりするのも面白いんだろうなと思うんですけれど、それ以上は言わずにしたいという思いがあるのでキャンバスからはみ出すということは今の所やっていないですね。

目の前の画面の中に全てを込めているんですね。


構想設計専攻への質問

【構想設計】という字面からかっこいいなぁと思っているのですが、構想設計専攻のかっこよさについて教えてください。(中西)

中西 【構想】と【設計】って、概念と概念で、大概念になってるなと思うんですよね。それがかっこいいなぁと。

石原 そろそろこの質問がもう天丼(お笑い用語。同じギャグやボケを二度、三度と繰り返すことで笑いを取る手法)になってきてます(笑)

私は全然構想設計専攻をかっこいいと思ったことがなくて「なんでもあり専攻」をかっこよく言い換えただけかなって思ってます(笑)構想設計は英語でいうと「Conceptual and Media Art」なんですけれど、コンセプトがあれば表現方法や媒体はなんでもいいという専攻です。何がかっこいいんだろう…コンセプトがしっかりあるというのはかっこよさではあるのかな。

ご自身が作品を扱う際、心がけていることはありますか?(石原)

私の作品はプロジェクションマッピングがまずあって、それでできることをしているんですが、結構機材系のトラブルが多くて。場所が変わると、そこの床から天井の高さや空間のサイズ感と映像がマッチするか、配線、電力の大きさなどの問題の調整に作品を作る以上に時間がかかったりします。そういったトラブルに気をつけて準備をする時間が多いですかね。

作品を置いて終わり、じゃなくてつきっきりで見てあげる必要があるんですね。

そうですね。作品を作るだけじゃだめなんだなって。それ以上に作品を見せるための技術や知識が必要になってくると思います。


最後に

中西 あ、ひとついいですか。油画のかっこよさも訊いて欲しいんですが…

西尾 そう!それ思ってた!(笑)

石原 じゃあ僕から…あの、【油画】って字面がかっこいいと思うんです。実は僕も彫刻に入る前は油画か彫刻で迷っていて。あの時に油画のかっこよさを知っていたら油画に入っていた可能性もあるんですが、油画のかっこよさってなんですか?

中西 ありがとうございます。美術に興味を持ったり好きになったりする理由って、絵を描いていたら褒められた、というような経験が多いと思うんですね。それをずっとやってきて、そのままきちゃった人たちなので、愚直に「絵を描きたい!」というところが面白いしかっこいいなぁと思います。

石原 なるほど…今まで油画の説明を聞いてきた中で、すごくしっくりくる表現かもしれないです。

中西 日本画とかは伝統的な技法があったりしますが、油画はみんなお絵かきにきているので。絵一本できてしまいました、みたいな。そこがかっこいいなと思います。訊いてくれてありがとうございます。今の話を聞いてどうですか、油画に行きますか?

石原 そうですね…2回生の石原はそれを聞いたら、めちゃくちゃ迷っていたでしょうね…今の僕はもう彫刻に毒されているので油画で制作している自分をあんまりイメージできないですが、そういうのを1回生の頃から知っていたら全然考えが違ったと思います。去年の1回生は直接先輩の話を聞いたり作業している人を見かけたり、そういうことがなかったと思うので他専攻を知って気持ちが覆るということが起こりにくいですよね。

今専攻に悩んでいる学生がこの記事を読んで、油画がいいな、彫刻がいいな、という気持ちに変わるかもしれないですね。

中西 この座談会を参考にして欲しいです。

以上で座談会は終了となります。いい質問がたくさん出て、とても楽しかったです。専攻の違いや共通点などもたくさん知れて、さらに作品展で各専攻の作品を見るのが楽しみになりました。ありがとうございました!


  • インタビュアー吉村 英珠
  • カメラマン佐々木 茜音
  • イラスト石塚 紗詠

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