2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

専攻対談

総合芸術学科 日本画 陶磁器 DIALOGUE 004

  • 総合芸術学科山田 歩実
  • 日本画谷川 真紀
  • 陶磁器橋本 きおな

陶磁器専攻への質問

制作にあたって、釉薬のひび割れや焼いた時の色の変化などの偶然性をどこまで許せますか?(山田)

橋本 テーマや表現したいことから大きく外れていなければ私は「お、なんかいい感じになってる!」って結構許せちゃう方です。自分の想像通りにできたものよりも、逆に予想外になったものの方が出来が良かったりもします。私はもともと釉薬の現象の変化とか焼成状況の違いによって変化する部分に惹かれていて、そういうのを活かせる作品を作りたいと思っているので、割と焼成における偶然性はポジティブに捉えていますね。

結構許せるんですね。

橋本 そうですね〜。でも逆にひび割れとかは自分の技術不足でできるものなので、悔しいなとは思いますし、それが出来ないよう気をつけています。

陶磁器専攻に進むと重いものが持てるようになる、筋肉がつくと聞きましたが本当ですか?(谷川)

橋本 力持ちになったな〜と思うことはあんまりないけど…(笑)でも持ち方のコツはわかってきたりします。重いものを持つ時の筋肉の使い方がわかって、うまく運べたりします。2回生の時にろくろ課題をやったときは土練り(成形前に素地の粘土を練り上げること)を最低限する筋肉がついたなというのは実感しました。

山田 工芸基礎の時に薪割りをした記憶があるんですけれど、そういうことも多いんですか?

橋本 今大学では前使っていた薪窯が使えないんだけど、先日ちょうど外部の実習で「登り窯」っていう山の斜面を活用した窯を使ってて。そこでは薪を使うからみんなで割りました。

山田 私薪割りした時に全身筋肉痛になりました…

橋本 めっちゃわかる!!斧持つだけで腕がね…薪割りはたまにやるとすごい疲れるし筋肉痛になりますね。

橋本さんが思う、陶磁器の魅力とは?(谷川)

橋本 さっきもちらっとお話したんですが、私は制作する中で、焼成でできる現象とか、釉薬の色とか質感を利用した、焼き物の絵画性に興味を持っていて。なので必然的に釉薬や加飾の(陶磁器の表面に水分の多い粘土や絵の具を施して立体的に装飾する技法)テストをする機会が多くなるんですが、この土にこれをかけるとこういう色になる、という新しい組み合わせを見つけると、きたーーー!!これや!!となります(笑)なのでさっきもあった「窯で出来る偶然性」はやっぱりすごく魅力的だなと思います。自分の手だけじゃなくて、自然の力も借りて作ることで、自分の技術以上の素敵なものが出来上がるのは陶磁器の魅力だし、やってて良かったなぁと思うところです。


日本画専攻への質問

京芸の日本画専攻の魅力とは?(山田)

谷川 京芸の日本画は3つのゼミに分かれてはいるんですが、分かれる前の1、2回生の間に各ゼミの特色を活かした授業があるんです。そこでそれぞれのゼミの先生に指導してもらえる機会があるので、その後もすごく専攻内の風通しがいいです。私は2ゼミだけれど、研究室に「私も参加できる1ゼミの授業ないですか?」って聞きに行ったり、3ゼミの先生が制作室まで絵を見に来てくださったり…そこがめっちゃいいなと思っています。あとはいろんな方面でのスペシャリストがいらっしゃるので、困ったら助けてもらえることですかね。

京芸の日本画独自の風潮のようなものはありますか?(山田)

谷川 「写生が大事」っていう認識ですかね。関東の方だと写真を撮ってそれをみて描く人もいるらしいんですけど、あくまで写真は補助的な役割で、それを指針にして描いちゃダメだよ、というのは京芸ならではかなと思います。

山田 そのために鶏が7羽待機していますもんね。

梅雨の時期は描けなくて困っている日本画の方達をみました。

谷川 そうですね、地面課題も地べたに這いつくばって描いていました…

橋本 多摩美術大学の友達と京芸のカリキュラムについて話したことがあるけど、地面課題を話すと、こんなことするんだって驚いてる人が多かった。やっぱり結構違うんですね。

これから先、やりたい表現や挑戦したいことはありますか?(橋本)

谷川 今は心の中の普遍的な景色の中に、飼っていたうさぎを遊ばせてやりたいなと思って描いています。飼っていたうさぎが安心して遊べるような、私が見ていいなと思った世界を表現したいと考えています。そのための方法などはまだ模索中ですね。

そのお話を聞くと、個人インタビューで橋本さんにも伺った作品のテーマと似ているところがありますね。

橋本 そうそう!私も聞いていて似ているな〜と思いました。私は飼っていた犬が天国でこういうところにいてほしいな、というテーマで前期に制作をしました。今回はまたちょっと違うテーマでやっているけれど、自分の中の心地のいい世界観みたいな感じはすごく似ていますね。

谷川 似てますね…!亡くなってすぐが地面課題だったので、私はそれもあって地面課題がすごく思い入れのある課題でした。物理的に一緒にいられないから、心の中のうさぎに私が見た綺麗なものを見せてあげたいな、という。そこからずっと「ここにいてほしい」という気持ちで制作をしています。


総合芸術学科への質問

総合芸術学科は学芸員資格を取っている人が多いイメージですが、取ることを推奨されていたりするんでしょうか?(橋本)

山田 強制ではなかったと思うんですが、ほぼ全員が取っていますね。総芸の人たちのなかで学芸員を志望されている方達が多くて、おそらく院に進んで学芸員の募集を探すという方は学芸員資格を取得されているのかなと思いますね。

そもそも「芸術学」とは何を勉強しているんですか?(谷川)

山田 まず、よく間違われるんですけれども、「総合芸術・学科」じゃなくて「総合芸術学・科」なんです。なので「総合的に芸術学を学ぶ」というところを前提としています。その中で芸術学に関わることであれば、日本美術史・西洋美術史などの美術史から、デザインや建築についてや、美学など、本当に自由に学べる場所です。

橋本 なるほど〜幅広くいろいろできるんですね。

総合芸術学科の魅力はなんですか?(谷川)

山田 1学年5人という少人数な学科なんですが、各分野に精通した先生がたくさんいらっしゃるのでその先生方に丁寧に指導していただけるというところがまず魅力です。あとは、人数が少ないので仲良くなりますね。ゼミは一応あるんですが、他のゼミの先生方のお話を聞きに行ったり、展示のお手伝いに行ったり、学年やゼミを越えたやりとりができるというのも魅力です。

論文を制作するにあたっても先生とすごくやりとりをされているイメージがあります。

山田 そうですね。先生が必ず1人ついてくれて、指導していただきながら卒論を制作していきます。他にも、半期に1回「合同発表」という、実技で言うところの合評のようなものがあって、そこでは研究の進捗を総合芸術学の先生と学生の前で発表を行うのですが、その指導もしていただいています。

谷川 合同発表って言うのは…学会、的な…?

山田 そうですね…小規模の学会とも言えますね。先生や学生から質問などが飛んできます。

谷川 素人質問で恐縮ですが、っていうあれですか…

山田 そう、多分そんな感じの…。色々な視点からご質問いただけるのはありがたいんですけど、そう言われて質問飛んでくると、やっぱりめっちゃ緊張しますね(笑)去年はコロナで発表がオンラインになったのですが、以前は新研究等の教室に集まって、スクリーンにスライドを写して発表していましたね。

それはやっぱり、卒論の前の発表が一番大きなものになるんですか?

山田 そうですね。4回生後期と修士2回生の後期の合同発表は、卒論と修論はこんなことをやります、っていう発表をする方が多くて。卒論の時は最後に口頭試問というものがあります。学生1人に対して所属しているゼミの先生と他のゼミの先生から質問を投げかけられると言う風に聞いています。

一同 ひぃーーーー……

面接みたいな形なんですね、すごく緊張しそうです…。今回は美術科・工芸科・総合芸術学科の異なる専攻の方々からお話を聞くことができて、とても楽しかったです。ありがとうございました!


  • インタビュアー吉村 英珠
  • カメラマン佐々木 茜音
  • イラスト石塚 紗詠

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