2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

中西 優多朗 Yutaro Nakanishi 油画専攻

1.テーマについて

はじめに簡単な自己紹介と制作しているテーマについて教えてください。

油画専攻4回生の中西優多朗です。
基本的には写実的な絵を描いていて、テーマは、この作品(以下写真の背景にある作品)についてもそうですが、「流転する存在」や「無常観」というものが主です。多くの作品は実際に見た風景や人物などを描いていて、見たものから受けた感動を表現できないかと考えてここまでやってきたという感じです。
この作品(背景の作品)は自由に見てもらいたいなと思っているので、これが誰なのかは言わないようにしています。この2人の関係性や子供の目線の先に何があるのかなど、そういうのを想像しながら見て欲しいなと思っています。

写実の作品は高校生の頃から描いているんですか?

そうですね。もっと昔の、小学校の授業で、例えば神社や風景、友達を描くような授業があると思うんですけど。その時から「なんとかそのまま見たまま描けないかな」と思っていました。
写実絵画というジャンルは、第2回ホキ美術館大賞に作品を出して、入選してから実際に美術館に行って初めて知りました。でも、それと関係なく、昔から風景などを見た時に、全体ももちろんだけど細かい部分に綺麗さを感じてきたので、結果的に写実寄りの絵を描いてきたという形になります。

2.制作について

中西さんの海の絵を拝見したことがあるのですが、近くで見るとすごく細かくて…一作品につきどのくらいの時間がかかっているんでしょうか

一番かかったのは、第3回ホキ美術館大賞に出した《次の音》っていう作品なんですけれども、それは10ヶ月ほどでした。毎回試行錯誤なんですが、その時は古典技法も入れつつ、新しいことに挑戦しようということで背景に意味を込めて日本の文様を入れてみたりだとか。そういうこともしていたのでその分時間がかかったかなと思います。

《次の音》

大きさはどのくらいだったんでしょうか?

この作品はs100号(1620×1620)ですね。

この服の素材のニットの質感だったり、本当に見出したらキリがないです…すごく繊細な作業ですよね。
人や風景を描く上で何か大切にしていることなどはありますか?

毎回描くモチーフごとに何を表現したいのかという目標を決めていて。例えばこの作品だったら人物がメインなので、自分が見えている通りのその人、というものを表情などに特にこだわって描いたのでだいぶ時間がかかったかなと思います。
同様に風景の作品、例えばこの《夜の鴨川》だと、昼間だと景色がほぼ見えるけれど、夜の風景だと見えるところと見えないところがあるじゃないですか。そういう時に見えないから見えないものとしてベタッと描くのか、見えてはないけれども実際に空間としてあるものとして描くのか、みたいな。そういうところをこの作品では考えていました。

《夜の鴨川》

最近だと、奄美大島に行った時のこういう風景を描いた作品があるんですけれども。これは砂をどう描いたらいいのか、奥のミスト感をなんとか表現できないか、などを考えながら描いていました。なので毎回、「ここは絶対に表現しよう」というポイントを作ってそのために工夫するという感じですね。

《龍郷の海》

3.モチーフとなる写真について

こういった風景の写真は日頃から撮りためているんでしょうか。それとも描くために撮影しに行くんでしょうか。

基本的に取材に行きますが、例えばその時は「これを絵にするのは難しいな」と考えていても後々見返して「こういう風にしたらできるな」と思うことがあったり。全くそんなつもりじゃなかったけど行ってみてパッと見た風景がすごくよかったから資料として収めておいて後から描いたり。いろんなパターンがあります。

なるほど。人物の作品は実際にいる人物の写真を見ながら描いているんでしょうか?

今の所は知り合いにモデルを頼んだりしていて。来てもらってデッサンをして写真を撮って、資料として用意をします。それを元に描くんですけれども、資料が揃っていないと描き進められないのでまた来てもらったりすることもあります。
写真は資料にしかならないので、もちろんそれは使うんですが、はじめにデッサンを作ってから描くこともあります。風景の際も、もう一度見に行ったり。写真を使いながらも色々と行うという形になります。

4.卒業制作の最終形

中西さんの作品の完成形しか見ることがないのですが、この作品はこれからどのような工程を踏んで最終的な形になるんでしょうか。

僕は癖で左上からバーっと描いて右下で描き終えてしまうんですが、今回は全体的にぼんやり進めてからちょっとずつ描きこんでいこうと思っています。これはまだまだ全体でいうとざっくり描いている段階で、2、3割ぐらいの進捗なんですが…ちょっと時間がないので…大急ぎという感じで…

毎回やり方もちょっとずつ変えていて。前の人物画ではグリザイユっていう、白黒で描いてから色をつける方法で描いていたけれども、その後の風景や人物で色だけで取り組んでみた時に発色が綺麗だったのでそれを取り入れて進めています。

5.美術館での展示について

中西さんは去年の3回生の進級制作でも美術館で展示をされたと思いますが、展示方法だったり制作以外の面でこうしたいという考えはありますか?

そうですね…とりあえず完成させないと、と思っています。
美術館で展示するのは、前年度同様多くの方に見に来ていただけるのでいい機会だなと考えています。
せっかく広い美術館に展示をするので、最初はF100号(1620×1303)にする予定だったんですけれども、(やるか…)となってF130号(1940×1620)にしました。なのでこの大きさも生かしてよく見える場所に展示できたらいいなと思います。

油画ってやっぱり大きい作品が多いイメージなので、並びも大切ですよね。

そうですね。特に目線とかもあるので、そこもどうするのかを油画専攻内で考える必要がありますね。

当日完成した作品が展示されるのを楽しみにしています。
ありがとうございました!




インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:佐々木茜音


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