2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

西尾 綾香 Ayaka Nishio 環境デザイン専攻

1.自己紹介と卒業制作について

簡単に自己紹介と、制作しているものについて教えてください。

環境デザイン専攻4回生の西尾綾香です。出身は京都府です。
今は卒業制作に取り組んでいて、模型を作ったり、紙にいろいろ描いて考えながらどういうことをしようかなと探っているところです。
卒業制作では作品展の中に空き地のような場所を作ろうと思っています。作品展っていろんな学年の作品がズラーっとカタログ的に並んでいるからなのか、来場する人の多くはあんまり滞在しないなと思っていて。うちの専攻は全学年一緒に展示していて特に物量もあるから流して観ている人が多いんです。作品が展示されている空間に、そこに留まれるような余白を作って、新たな視点での作品展の鑑賞体験が生まれたら良いなあ、そういう空間をデザインしたいなあと思って、今作っています。

環境デザイン専攻では、卒業制作のテーマは自由なんですか?

そうですね。結構自由で、「こういう感じで制作進めてください」みたいなことも言われていなくて。京芸の環境デザイン専攻って卒業設計でなくてもいいんです。卒業設計っていう形で病院とか都市空間などのデザインをする人とかももちろんいます。ですが、それに限らず空間を使った芸術作品のようなものを作っている人もいます。なんでも許されるので自分自身で課題を見つけて制作していますね。

2.制作の上で大切にしていること

環境デザイン専攻で課題を作るにあたって、大事にしていることや一貫してテーマにしていることがあれば教えてください。

大切にしているのは、伝える際のコンセプトダイアグラムという手法です。図を使って、自分の考えていることやコンセプトを端的に表現するコンセプトダイアグラムというものを授業で教わったことがあって。それが自分の中でしっくりきています。

《わいわいマルシェ》2021年11月

メモがいっぱいありますね。

図面や模型を実際作るよりもまず考えることに1番時間使っているかもしれないです。

デザイン科は全体的に、文を読んで作品を見て理解して、と鑑賞する上でやることが多くて大変なのでぱっと見で印象がわかると見やすいですね。

そうですね。実物は作れないからこういったものをプレゼンなどでは使用します。建物って基本デカすぎるので、コンセプトダイアグラムやパース画像とかを駆使してなんとか伝えようとするっていうのは環境デザインの特徴だと思うし、自分も意識しています。

3.コロナ禍で変化したこと

コロナ禍において表現の仕方だったりテーマ・着眼点は変わりましたか?

結構変わりました。制作する手段も考えている内容もだんだんコロナ禍の影響が出てるなと思っています。手段としてモデリングソフトをよく使うようになりました。ずっと家にいなくちゃいけない中でコロナ前に少し授業で触った3Dモデリングのことを思い出して、またやってみようかなと。専攻には直接関係ないですがwebサイト、映像や音楽を作ってみたり家に籠もっていると自然にデジタルへの意欲が高まっていました。作品の内容としては、スケールが大きい外部空間を扱うことが増えました。放置竹林の中にでっかい螺旋階段のタワーを作るとか、自分の近所の公園にでっかい布の蓋を作るとか(下写真)、近所のだだっ広い田んぼの中にかかしを立てて景色を独り占めするとか。3Dモデルは画面の中でどんな大きな空間も作れるっていうのと、一方で巣ごもり生活やデジタル世界への反抗心というか、「でっかい外の空間に行きたい!」っていう思いもあって、それが作品に表れている気がします。

《true triangle ― 真実のフタ》2020年7月

コロナより前は、そう思うことはなかったのですか?

傾向としては若干あったかもしれないけれど…。課題自体もコロナ前はもともと敷地とかサイズが決められていることが多くて、枠に当てはめて作る感じだったけど、コロナの時期を通して敷地を自分で決めるようなものも増えて、自分でより広い空間を選ぶようになったっていうのはありますね。空間への憧れみたいなものが強まりました。

4.制作方法が固まったきっかけ

環境デザインで課題を行う中で、今の制作方法に固まったきっかけはありますか。

2回生の時の設計課題で「空き地を建てる」というのをやったことがあって、それが今の制作の考え方に繋がっています。対象の敷地が決まっていて、その地域を実際に見に行って自分が建てたいものを自由に何でも建てるという課題でした。

実在するところなんですね。

そうです。実際にみんなで更地の敷地に入ったり周辺地域のリサーチをしました。何かを建てる課題だったんですけど、私は何もない剥き出しの地面を見て、建築空間が人の記憶と密接に関係しているのは空き地がよく体現してるな、とか空き地自体が気になって。空き地の空き地性をどう伝えるかを考える課題にしたいなと思いました。
敷地を何もいじらずに、「はい空き地を作りました」っていうと私がやる意味がなくなってしまうので、「やがて駐車場になる予定の空き地」という設定の空き地を作りました。駐車場になるので車止めや自転車の輪止めが既に設置されているんですが、それらは公園の遊具みたいなデザインになっています。駐車場になるまでの空き地は期限付きだけどのびのびと過ごすことができて、その状態は空き地らしい空き地である。というものです。
この白い線は駐車場になった時の輪郭をなぞっています。設計をするんじゃなくて空き地のストーリーをイラストと模型、テキストで物語ることで空き地が持つ空き地らしさ、儚さを浮かび上がらせようとしました。

《Archi-chi》2019年12月

最初は「何かは建てなさい」と怒られるんじゃないかと思っていました。だけど担当の先生は「なんか面白いじゃない、空き地の空き地性ってなんだろうね」って一緒に興味を持ってくれて。たとえ建物の設計をしなくてもストーリーを作ったりして空間に対しての自分なりの思想を表現しても良いんだなと感じました。

環境デザインというのは建物を建築するだけではなく、そもそもその場所をどうするか考えるということになるんですね。

そうなんだと思います。空間に対して自分がどう答えるかですね。自分なりに答えられたら、言い切れたらなんでも良いんだよっていう傾向があります。もちろん設計をバリバリやる学生もいますし、少人数の専攻なので毎年所属する学生の志向によって雰囲気は変わりますが、許される土壌がある。良い専攻ですよね。

素敵な専攻ですね。同じデザイン科ですが知らないことがたくさんあり、お話を聞けてとても楽しかったです。また作品展において憩いの場のような空き地ができるのを楽しみにしています。ありがとうございました!




インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:佐々木茜音


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