2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

橋本 きおな Kiona Hashimoto 陶磁器専攻

1.制作について

まずは簡単に自己紹介と、制作のテーマについて教えてください。

陶磁器専攻4回生の橋本きおなです、よろしくお願いします。制作においては、焼き物による新しい絵画表現をしていきたい、と思いながら取り組んでいます。元々は釉薬の色や質感に興味を持っていて、そういうのを見たり、かわいいと思った釉薬を作ったりするのがすごく好きで。色々やっていくうちに、釉薬をただ作品にかけるんじゃなくて、平面における絵具のような形で使ってみたらどうだろう?っていう発想から始まりました。モチーフについては、毎回これを描く!みたいにはあまり決めないようにしてて。その時にいいなと思った風景とか綺麗だなと思った植物とか、そういう日常の出来事から発想して、ドローイングしたり釉薬のテストピースを作ったりしながら、自分の中にあるイメージ的な情景や物語を書き起こすような感じで制作しています。前期では、昔飼っていてもう亡くなってしまったわんちゃんにいてほしい場所をテーマに、天国のような風景をイメージして作品を作りました。

2.釉薬などの技法について

釉薬やそれ以外のものについて、制作する過程や違いを教えてください

今持っているのが(下写真)釉薬と化粧土を使っているんですけど、この2つはそもそもジャンルが全く違います。釉薬はお皿とかにかかっているもので、溶ける成分でできているので焼くと表面がガラス質になったりするものかな。化粧土は、色のついた土なので焼いても溶けません。化粧土自体はサラサラした状態で使うんですけど、それに顔料を混ぜて塗って焼くと溶けないから発色がいいし、釉薬みたいに滲まないので、そこが違いかなと思います。

この化粧土で描くときは、焼けている状態のものに描くんですか?

私は焼く前のまだ湿っている状態のものに描いています。そうすると作品と化粧土の収縮率が一緒なのでひび割れないんです。カンカンに乾いた状態に化粧土を塗ると、収縮率が違うから、乾いている方は収縮しないけど上に乗せたシャバシャバの化粧土の方は収縮してひび割れたりするんですよね。なので、私は塗っても化粧土がひび割れないように作品がちょっと湿ってる時に塗ります。逆にわざと乾いているところに塗って、ひび割れてるテクスチャを作るっていう方法もあるので、目的によってタイミングを変えてるという感じです。

釉薬も同じですか…?

まず陶磁器って大体2回焼くんですよね。1回目は850℃~900℃で焼くもので「素焼き」と言います。生の状態だと水を含むと元の粘土の状態に戻って崩れてしまうんですけど、素焼きをした後だと吸水性のある状態に性質が変化するので壊れないんです。釉薬の原料は粉末状なのでそれらを水に溶いて、素焼きの状態の作品にかけると、水分だけ吸われて釉薬の粉末が作品の表面に定着するっていう感じです。その後また1230℃~1250℃で焼くと釉薬の成分が溶けてガラス質の成分になります。

理科の実験のような感じなんですね。

そう!ほんとにそう!私は高校は文系だったけど、化学基礎の授業がすごく好きで。それもあって釉薬の成分によって化学変化が起きて質感が変わったり、温度や焼き方で色が変わったりっていうのがより面白くて。

なるほど…!どういう過程で焼き物が出来ているのかを知らなかったので、こういったお話をきけるのはすごく面白いです。焼き方や色の組み合わせは無限にあるんですね。

3.コロナの影響

コロナ禍で変わったことや新しく始めたことはありますか?

まず大学に入れなくなった時に、どうするんや…!となったんですが、先生が家に土と道具を送ってくれて、家で制作をしましょう、という形になりました。
変わったことは、作業場所が家か大学かっていうことですかね。家だと使える道具も限られてできることが変わった中で制作するっていう。
あとは人と会わない状況だと自分と向き合う時間がとても増えて、自分が制作する時にこんなことを考えてるんだ、という新しい気づきもありました。
大学に入れるようになっても、今までは夜中の12時までできた制作が夜9時までしかできなくなって、1日にできることが3,4時間ずつだけど少なくなってしまって。なので、間に合わせなきゃ!という気持ちがより一層強くなりましたね。

確かに陶磁器は夜遅くまで学校にいるイメージがあります。陶磁器の制作をするにあたって、1作品につきどのようなスケジュールで進めているんでしょうか?

サイズとかにもよるんですが…土は放置してしまうと固くなってしまうので、どれだけ保湿しながら作っても、成形できるタイミングや期間が限られてるんですよね。かといって土が柔らかすぎると手びねりするときにぐにゃぐにゃになっちゃうから、乾かしながらやらないといけなかったり。成形が終わってもその後しっかり乾燥させないと、焼いた時に作品の中に含まれている水分が膨張して爆発してしまうので、窯の日から逆算して作業をしないといけないんです。それも夜遅くまで残らなきゃいけなくなってしまう原因かも。土の状態によって面倒を見る必要があって自分の気分では進められないので、やっぱりそこが大変ですね。

生き物みたいですね…やっぱり年数を重ねると、土の状態がわかってくるんですか?

わかってきます!コップでも、本体の形を先に作って、取っ手がこの固さで本体がこの固さならこのタイミングでつければいけるな…とか。慣れるとだんだんわかってきますね。

素材と寄り添って、だんだんとプロになっていくんですね。

4.卒業制作について

作品展に向けて考えていることや展示計画は決まっていますか?

実はぶっちゃけ模索中で。最初にこうしよう、って決めるよりは手を動かしながら焼いて、このサイズでこう焼くとこういう印象になるんだ〜っていうのを試すことで発見があったり。あとはこういう釉薬のテストピースを作って、これいいな〜使いたいな〜って考えたり。テストしながら考えるっていう感じですね。

あとは自分の絵のイメージとして小さなものを細々描くよりも大きなストロークでのびのびと描きたいっていう思いがあるので、自然とサイズは大きくなっています。
とにかく制作のピッチ上げて頑張っていかなきゃって感じです!

作品の他にもドローイングなどを見せていただき、より橋本さんの作品を見るのが楽しみになりました。作品展での展示を楽しみにしています、ありがとうございました!




インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:佐々木茜音


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