2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

稲岡 莉々 Inaoka Riri ビジュアル・デザイン専攻

1. 自己紹介

まずは自己紹介と、稲岡さんの制作について教えてください。

VD専攻4年生の稲岡です。私はずっと作字をしています。最初は自分が好きな文字を書いていたんですが、最近は日記を一緒につけていて、片面に日記、もう片面に日記の中からワードを選んで、その文字を作ってます。

ノートの量がすごい…! そして、アナログで作られているんですね。

そうですね、単純にデジタルが不慣れってだけなんですけど(笑) あとは、個人的に凄い最先端の映像技術!っていうよりは、工事現場で絵筆を使って文字書いてる職人のおじさんの方が私は格好いいなって思うので、デジタルよりはアナログに惹かれるんだと思います。作字する時はいつもノートにサインペンで書いてます。これが一番書きやすいですね。続けるのがしんどくなったら、敢えて薄いノートに書くことで、一冊やりきった達成感を味わってます(笑) ペンも使い切った日付を記録して取っておいてます。

《注射意識》の日にワクチンを打ったのかなとか、想像が膨らみますね。

正解です!(笑) 

作字を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

去年、コロナで4月5月に、なんの課題もない「無」の期間がありましたよね。私は散歩がすごい好きなんですけど、コロナで外にも出れなくなって、どうしようってなっちゃって。私、制作で焦ったら夜に寝れなくなるんですよ(笑) 「今日何もしなかった」って思うのがしんどくて、とりあえず何かをしなきゃと思って始めました。4月4日から始めて、最初はTwitterから面白い言葉を選んで、5月くらいまで続けてたんですね。で、6月になって課題が始まったので、ちょっと期間が空いてしまって。7月くらいに久しぶりにやってみたら、めっちゃ手が鈍ってたんですよね。これは続けないと力付かないわと思って、そこから再開しました。自分の日記からだったら毎日できるかなと思って、今は日記感覚で続けてます。毎日2時間くらいで描いてます。

2. 作字について

作字において影響を受けたものはなんでしょうか?

私は古本屋が好きで、実家の近くに古書店があるんですけど、そこは明治とか昭和初期の絵葉書も売っているところで。それを見た時に、日本語ってこんなに楽しいんだって思ったんですよね。今はなんでもすごくスタイリッシュで読みやすい文字になってますけど、昔の文字は「ほぼ読めへんやん」っていう造形も許されてて、文字で遊んでいる感じがすごく可愛いなと思いました。あと影響を受けたのものは、ザ・クロマニヨンズとかのジャケットをずっと制作されている菅谷晋一さんっていうデザイナーさんの『エポックのアトリエ』というドキュメンタリー映画です。アトリエでの風景と菅谷さん周辺のアーティストや編集者さんのインタビューで構成されている映画なんですけど、それがめっちゃ良くて。菅谷さんは偶然性とか手書きとかをすごく大切にされている方で、文字とかも画用紙を切って一発目にできた形で作るみたいな、アナログな人なんですよ。その菅谷さんの仕事人って感じがすごく格好いいと思ったんですね。手書きからソフトに移行したほうがいいのかなって悩んでいた時期にこれを見て、「手書きでいこう!」って思いましたね(笑) あと、三重野龍さんの文字はめっちゃ良いなと思います。基本読めないくらい崩してるんですけど、こういう字を見ると普段見慣れた日本語も面白いって思えるので、こんな字が作りたいなと思ってます。

なるほど、確かに稲岡さんの文字はちょっとレトロな要素もありますし、「文字で遊ぶ」っていう表現がすごくしっくりくる造形のものも多いですね。

日本語って絶対毎日見ますけど、私は普段は日本語が面白いと思うことがあんまりなくて。でも、古本屋に行ったら面白い文字があるから、そういう文字を自分でも作れないかなと思って始めました。どれくらいまでやったら読めるか、読めないかをずっと実験している感じですね。漢字とか日本語を形として捉えて、分解して、再構築するっていうのをずっとやってます。どの線を切るのか、繋げるかとかの作業で印象が変わるので、文字を作る時はすごく頭を使います。

3.VD専攻について

VDを選んだきっけはなんだったのでしょうか?

う〜ん、あんまり考えてなかったです……(笑) 私、コロナ前までは結構適当に過ごしてたんですよ。バンドのライブに行くのが好きで、それを主軸にしていたところがあって。ポスターとか作れたら良いなーって漠然と思ってたので、VDにしました。

VDは課題が多いイメージなのですが、印象に残っている課題はありますか?

2回生の進級制作のフィギュア制作は、VDでこんなこともやるんだっていうのが意外で、印象に残ってますね。小説に出てくるキャラをフィギュア化するっていう課題で、私は星新一の『天使考』っていう天使が派閥争いしている小説のシーンを立体化しました。最初は立体制作に戸惑ったんですけど、スケッチをちゃんとやれば、案外できるって感じでしたね。楽しかったです。

3回生の時の進級制作も印象に残っています。視覚障がいの人とコミュニケーションを取るための何かを作りましょう、っていう結構自由度の高い課題だったんですけど、私は自分で作ったロゴをTシャツに刷った時の作った!って実感をみんなが得られるようにできないかなと思って、自分で印を作ってそれを実際にシルクスクリーンで刷れるっていうキットを作りました。

去年小ギャラリーで『THE PAW展』というTシャツの展示もされていましたよね。すごく可愛かったです。

ありがとうございます! VDの友達との二人展ですね。私がシルクスクリーンがすごく好きだったので、小ギャラをTシャツで埋めようと思って展示しました。BASEでトレーナーを販売しているので、よろしければどうぞ!→ https://thepaws.base.shop

VDの卒制ってどんな感じで進むんですか?

卒制は選択課題を並行して一年かけて自由にやっていくって感じですね。見てもらっている先生が空間デザインを得意とされている先生なので、とりあえず秋までは物を作って、それをどうディスプレイしていくかアドバイスをもらって進めていきます。私は先ほど見せた作字をまとめた冊子を美術館で展示する予定です。

ありがとうございます!作字はもちろんですが、美術館でどのような形で展示されるのか、すごく楽しみにしております。




インタビュアー:山田歩実
カメラマン:駒井志帆


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