2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

石原 温三 Onzo Ishihara 彫刻専攻

1.作品について

はじめに簡単な自己紹介と制作している作品について教えてください。

彫刻専攻4回生の石原温三と言います。よろしくお願いします。素材は主に土を扱っています。彫刻は2回生の後期から自由課題が始まって、課題が与えられるのではなく自分が使いたい素材・好きな方法で作品を作ります。なので基礎が終わると放り出されるんですけれども…僕はその時からずっと粘土を使っています。4回生までずっと粘土を触ってきたので、逆に粘土以外で作品を作ったことはないです。

粘土を使って何をしてるのかというと、「お皿を作る」というようなことじゃなくて。僕の作品の中には「崩壊」というキーワードがあります。自然現象として「崩壊」ってあるじゃないですか。その「崩壊」から要素をとってきて、そこに自分が手を加えてあげることによって、自然の現象としての「崩壊」ではないんだけれどもこれは「崩壊」って言うしかないよね、という状況を作り出しています。僕はそれを「人為的崩壊」と名前を付け直して、皆さんに見てもらっています。これを見ることによって「これって現象としか言えないけどどう捉えようか」と思う人もいるかもしれないし、「自然の現象での崩壊だな」と思いを馳せる人もいるかもしれないし、はたまた全く違うことを考える人もいるかもしれない。僕の作った「人為的崩壊」から何かを受け取ってくれたらいいな、と思っています。

2.卒業制作について

10月22日~10月28日に大学のホワイエで「彫刻内見」という展示をされていましたよね。あの時の作品も同じテーマで制作されていたということですか?

そうですね。あれをもう少しブラッシュアップしたものを作品展に出そうかなと考えています。

作品展で展示する作品の具体的な大きさだったり、そのほかの詳細はもう決まっているんでしょうか?

今ここにある丸太と同じぐらいの大きさのもので崩壊を起こすということをやろうと考えています。一個一個はそんなに大きくないと思うんですけど、それを何個か並べてスケール感を出そうと思っていますね。他にも「人為的崩壊」の面白さの一つにこれが崩壊しているところをGoProで水中から撮るということを行っていて。それは映像を見るとものすごくスケール感が変わって見えて、自分で崩壊を起こしているからこそスケール感を簡単に変えることができるので、大きさに囚われないというところもあります。

3.素材について

ずっと粘土を使われているということなんですが、机の奥の白っぽいものと手前のもので質感が違うように見えます。いろんな種類の粘土を使われているということですか?

この奥の作品は実は素焼きをした状態です。これはまず、下の台を先に作って焼いてしまうんです。焼いたらもう水の中では崩れなくなるので、それを水槽の中に沈めます。その上に生の粘土を乗せると崩れていくじゃないですか。それを途中で下の台ごと引き上げて、それを乾燥させて、もう一度下の台ごと焼いてしまう、という方法で「崩壊している途中を止める」ということをしています。なのでこれは素焼きした状態のため色が違うんですよね。

木や石などの他の素材を使っている方も多いかと思うんですが、彫刻専攻ではどのような素材を扱えるんでしょうか?

彫刻は基礎の時に、木・石・土・鉄・樹脂は扱うことのできる素材になります。どれもすごく素材としてのパワーがあるので、言い方が悪いですけれど…それを使って変なものができることはない、という。どうやってもゴミっぽくはならないというか…わかりますかね… 素材のパワーがすごく強くて、石には石、鉄には鉄の魅力があるから、それで作ったとしてもある程度の存在感があるんですよね。基礎のうちにそういったパワーのある素材を扱うことができるので、だいたいそのうちのどれかを使って制作をしている人が多いですね。

扱う素材によって部屋は分けられているのでしょうか?

そうですね。樹脂部屋、木部屋、鉄部屋のような形でそれぞれを加工できる部屋があって、だいたいその近くでその素材を扱う人が制作をしている、という感じです。

4.コロナ禍での制作

彫刻は大学で作業をしているイメージですが、コロナ禍で大学に入れない期間に、それがきっかけで新しく始めたことや何か影響があったということがあれば教えてください。

まさにこの制作はコロナの時にできたものです。それまではこれが本当になんでもない円柱でそれを崩壊させていたんですよね。
コロナで大学に入れなくなってどうしよう…となった中でとりあえず大学から持って帰ってきた粘土は手元にあって。じゃあこれで何をしようかと考えた時に、朝の4時くらいに2、3kgの粘土の塊を手に持って近くの石垣のようなところにべチャーン!と叩きつけて型をとり、それを持って帰るということをやっていました。石垣とかコンクリートとか色々試していたんですが、その中の一つに、木の表面というのがありました。最初はそれをバチーンとつけて持って帰っていたんですけれども、そのバチーンとつける粘土が板状じゃなくて丸太のような形だったら、まるで丸太のような形を粘土に持たせられないかなと考えました。それを「崩壊」ということと合わせた時に崩れていっている状況をすごく自分が注視しているということに気づいて。なんでもない形って一番難しくて、「崩壊自体」に意識が向いていなかったんですが、これを作ることによって意識を向けることができて今のコンセプトに移っていきました。なのでコロナじゃなかったら僕の制作はまた別の方向に進んでいったのかなと思います。

5.作品展での展示

彫刻専攻の作品は結構大きいものが多いイメージなのですが、展示する場所などはもう考えているんですか?

場所決めは実はもうありました。基本的に学生同士で話し合って、各自の希望に沿って展示場所が決まるという感じです。彫刻は展示方法だったり見せ方一つで伝わり方が全然変わってしまうので、作品を作ることと、その作品をどう見せるかというのをどっちもを考えながら進める必要がありますね。毎年、この展示の仕方でよかったのかな…と思いながら作品展を迎えています(笑)

どんな形になってもそういう思いは残ってしまいますよね… 「崩壊」がテーマになっているということだったので、今年の作品展での石原さんの展示には何度か足を運んでその時々の違いも楽しみたいと思います。貴重なお話ありがとうございました!




インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:佐々木茜音


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