2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

棟 光里 Hikari Mune 構想設計専攻

1.制作について

まずは簡単に自己紹介と、制作のテーマについて教えてください。

構想設計4回生の棟光里です。
今は主にプロジェクションマッピングを使ったインスタレーションや、ダンスと合わさったパフォーマンスなどをしています。

卒制に向けて計画していることはありますか?

今年もインスタレーションをしようと思っていて、一部屋使って、プロジェクションマッピングを用いた没入できる空間を作ろうと考えています。去年から「精神と身体」をテーマにしていて、今回もその延長で制作を行います。

今までは概念的なものをテーマに制作を行ってきたんですが今回はもう少しクローズアップしようと思っています。「ずれ」のようなもの、例えば精神的にはしんどいのに仕事に行くとか、しんどいのに食欲がある、みたいなギャップってまるでそれぞれ一人ずつ別の人がいるようだな、と思っていて。その「ずれ」が面白いな〜と感じています。逆に精神的にも身体的にもしんどいときは、一致したんだなよかった、という安心感があったり・・・そういうことをテーマにしていこうと思っています。

音楽も大事にしていて、今回も「ずれ」や「違和感」をテーマに音楽を作ってもらっています。焦っている気持ちやもどかしさを表したいので、すごく早いテンポの中にずれやバグが入ってきてカオスな展開になる音楽をお願いして、それに合わせた映像を作って、最終的に空間が出来上がるようにしようと思っています。

もう1つ、音楽から作った映像とは別で、鑑賞者の動きをセンサーがキャッチして鑑賞者と連動して動くような映像にも挑戦しようと思っています。展示作品と鑑賞者との境界を壊して、個人の中の葛藤を共有するようなイメージです。

2.構想設計専攻を選んだ理由

棟さんは基礎の授業で日本画も選択されていましたが、最終的に構想設計に専攻を決めた理由はなんだったんでしょうか?

京芸に入る前はもともと構想設計志望でした。その中で1年間浪人をしていて、毎日毎日受験の課題に取り組む中で、以前は苦手だった色彩構成が急に好きになって、絵の具を扱うことが楽しくなりました。その後京芸に入った中で、もともと日本画で有名な学校だったこともあり、4年間で絵画を学んでみるのもありなのかな、という気持ちから日本画基礎を選択しました。合わなかったら構想設計にしようと思っていたんですが、半年在籍するだけでは全然日本画についてわからず…(笑) 道具の使い方などをやっと覚えたところで終わってしまいました。2回生前期の履修登録の際に本当にギリギリまで迷って…最後に決め手となったのは、卒業後にどちらがやりたいか、でした。絵画よりも映像をやりたい気持ちがあったので構想設計に進むことに決めました。

3.構想設計とは

構想設計のカリキュラムや自由制作が始まるタイミングなどを教えてください。

構想設計では2回生の後期からゼミに分かれての制作が始まります。2回生の後期までは教授から課題が出されますが、結構自由です。3回生からは課題もなくなり自由になって、自分のやりたいことを教授に相談しながら取り組んでいく、という形になります。

構想設計=映像、というイメージがすごくあるんですが、それは合っているんでしょうか…?

私のゼミはアニメーション・映画・実写など映像の人が多いんですが、もう1つの高橋・木村ゼミというところはコンセプトアート、というイメージです。あまり表現方法は決まっていなくてなんでもありな感じです。何をやるか、というよりかは、他の専攻でできないことでもここでなら出来る、という専攻ですね。

4.学外での活動

棟さんは学外でも活動を盛んにされているイメージがあります。その中でも最近行われたパフォーマンスの「Ogress」について、活動の経緯や内容を教えてください。

自分のやりたいことが、個人でやる制作よりも人と関わって作っていくものに変わってきて。今年の9月にやったパフォーマンス公演はダンサーさんや舞台・演劇をやっている方など、いろんな人を呼んできてみんなで作り上げました。個人的に趣味でダンスをしていて、すごくダンスが好きなので、ダンスとシンクロした新しい表現を、インスタレーションとは別にやっていきたいなと思っていました。ただ展示となるとパフォーマンスはすごく難しいので、インスタレーションは展示で実験的に行って、パフォーマンスは普段公演などを企画してもっと行いたいなと思っていますね。

大変だったのは、作品を作る以外にも場所とのやりとりや金銭面など考えることがとても多くて、現場に入ってから起こるトラブルの対処も行う必要があったことです。そこに直面した時に作家っていうのは作品を作れるだけじゃダメなんだなということを何度も実感しました。でもこれはすごくいい経験になりましたし、次の作品にも繋がって自分のスキルアップにもなるのでもっと経験を積んで次に活かしていきたいな、と思っています。

今取り組んでいる学外の活動もありますよね?

そうですね。それはちょうど「Ogress」を見ていただいた方からお声がけいただいて、学生演劇祭の演劇にプロジェクションマッピングで映像をつけるというお仕事をさせていただいています。これは結構、シンクロというよりか情景描写的な表現で行っていますね。

5.今後挑戦したいこと

今後さらに挑戦したい表現や制作したいものはありますか?

今は映像がAfter Effects内でほぼ完結してしまう状態なので、CGや3Dやブレンダーなどの新しいソフトを始めてもっと複雑で人の心情に寄り添ったデジタルの表現をしていきたいなと考えています。ダンスと合わさった作品もまだあまり数がないので、更にダンサーさんと繋がったり、公演も小さいものを実験的にちょこちょこやって、それを大きい作品に繋げていきたいと思っています。

卒業制作も含め、今後の棟さんの作品を楽しみにしています。ありがとうございました!

インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:佐々木茜音


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