2021年度 京都市立芸術大学 作品展 / 21-21 KCUA Annual Exhibition KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS ANNUAL EXHIBITION 2021

学生インタビュー

山田 歩実 Ayumi Yamada 総合芸術学専攻

1.卒業論文のテーマについて

まずは自己紹介と、今行なっている卒論のテーマについて教えてください。

総合芸術学科4回生の山田歩実です。
研究では、17世紀のベルギーの画家ヤン・ファン・ケッセル1世が描いた、日本の甲冑を研究しています。

これがヤン・ファン・ケッセル1世という画家が描いた《アメリカの寓意》という絵なんですが、ここに日本の甲冑っぽいものが描いてあります。その甲冑の伝来事情や、なぜこの作品に日本の甲冑が描かれているのかというところを研究しています。

なるほど。この作品を知ったきっかけはなんですか?

この作品はミラノのアンブラス城というところに展示されているんですが、大学1回生の時にイタリアに旅行に行った時にたまたまこの絵を観て、謎が多すぎてとても印象に残っていて、調べたいなと思ったのがきっかけです。

何かこれについて現在の段階で分かっていることはあるんでしょうか?

まず、この甲冑がどこにあるのかというのは検討がついているのですが、それがどうやって日本から西洋に伝来し、どうして画家が描くことになったのかという経緯については、卒論までにいくつか仮説を提示できるように詰めている感じです。

2.卒業論文とは

卒業論文というのは、テーマを設定して、それに対して自分なりの考察を述べるという形なんでしょうか。

そうですね、私の場合はそういうことをすると思います。ただ、学部の卒業論文ということもあり、革新的な自説を展開するというよりは、先行研究を丁寧に見ていく作業が中心になっていくと思います。このヤン・ファン・ケッセル1世という画家は正直日本では知名度が低いので、その画家について、この甲冑が描かれた《アメリカの寓意》が内包されている「四大陸の寓意」という画題について調べていきます。

3.必要な資料の話

この資料は元から大学にあったものなんですか?

いえ、大学図書館や指導してくださってる先生に取り寄せていただいたものが多いです。

去年の総合芸術学の先輩とお話しした際にも資料のために関東に行ったり、大学の図書館に問い合わせたりしていると聞きました。そういったことは結構あるんでしょうか。

そうですね。私の場合やっぱり西洋絵画の研究なので、海外の通販サイトみたいなところじゃないと手に入らない資料もあって。他の大学図書館にある場合は大学の図書館から取り寄せていただけるんですけど、そうじゃない場合は先生にお願いして取り寄せてもらったり、購入していただいたりしています。

なるほど。この資料も全て英語なんですね。

そうですね。やっぱり日本語の論文と比べて、訳す分読むのに時間がかかりますね。

4.総合芸術学に入ったきっかけ

根本をたどる質問になりますが…総合芸術学を選んだきっかけや、入ってさらに取り組みたいと思ったことはありますか?

もともと西洋絵画が好きで、美術館で働く学芸員という職業ににすごく憧れていたのもあって、学芸員資格を取れる大学を探していました。学芸員資格自体は文学部などでも取れるんですけど、京都市立芸術大学は実技の方がたくさんいらっしゃる環境で美術の研究ができるところにすごく魅力を感じて、ここで勉強したいと思って志望しました。
もともと西洋絵画から美術にハマったので、西洋絵画の研究をしたいなと思っていたのですが、西洋絵画って結局本場は西洋なので日本でやるのはどうしてもハンデがあるんじゃないかと感じていました。ですが、何か日本やアジアと関わりがある研究だったら日本でやる意味もあるんじゃないかと考えて、今の研究テーマに至りました。

総合芸術学では、4回生になるまではどのような授業があるんですか?

総合芸術学科は、まず1回生の前期は総合基礎を共通で受けて、後期は1つ専攻を選んで実技を学びます。私は工芸基礎で工芸を一通りやらせてもらいました。2回生の前期も一応他の専攻に行っていい期間ではあるんですが、私は総合芸術学のカリキュラムに進みました。そこで論文の書き方や、展覧会の企画のさわりを教えていただきました。後期は先生へのインタビューをまとめた冊子を作る授業があって。先生に自分たちで取材したり、映像を撮って編集したり、冊子の企画を考えたり…その成果物を作品展で展示しました。そして、3回生から研究に移っていくという感じですね。
半期に一回、合同発表という、専攻内の全学生と先生の前で研究過程を発表する、実技でいう合評のようなものがあるので、それに向けて発表資料などを作りつつ、卒業論文に向けて研究を進めていきます。

3回生の頃から、西洋絵画を研究したいというテーマはなんとなく決めていたんですか?

そうですね。私は大学1回生の時にこの絵画を見てから、「これについて研究しよう」と思ってちょこちょこ調べてはいたんですが、研究テーマを決める時期は人によると思います。そこが柔軟なのが総芸の良いところかなと思います。

5.卒論の展示について

最後に卒論の話に戻るんですが、作品展にあたって何か考えていることはありますか?

卒論についてはもちろん書かなきゃって感じなんですが(笑) 
総芸特有の悩みかもしれませんが、作品展で卒論の展示をするにあたってディスプレイを考えなきゃいけないっていうのも今悩んでいて。他の大学の方は、卒論はあってもホームページに掲載するだけだと思うんですけど…今はそれに頭を抱えています。個人的にはいろんな要素が複雑に絡み合う、多くの人にとってあまり馴染みのない分野を研究をしているので、そこを分かりやすくした冊子とかが作れたらな〜と思っています。

去年美術館で総芸の方々が展示している様子を見た時に、研究に関連したぬいぐるみを置いている人を見ました。それがすごく親しみやすくて印象的でした。

そうですね、あれ(制作室に飾ってあるオフィーリアのパネル)も美術館で飾られていたものだと思うんですけれども、パネルを置いて工夫したり、研究の過程ノートを展示されている方とかもいらっしゃって、そういうのがあると文字いっぱいの卒論もちょっと読んでみようかな、という気になりますよね。ディスプレイの仕方も総芸で学んだことを活かせる場なので、そこまでこだわって頑張りたいです。

展示方法と共に、卒論の内容を楽しみにしています。ありがとうございました!




インタビュアー:吉村英珠
カメラマン:駒井志帆


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